新しい障害

ムスコにピアノを買い替え、メキメキと上達し、本人も、私も、ピアノがもっと好きになったころだった。

ずっと気になっていた、ムスコの「字」と「絵」について学校の先生に相談したところ、先生の方からも「そろそろお話ししようと思っていた」とのことだった。

小さい時から、絵をあまり書かなかった。

書いても、ちょっとよくわからない、というか、自分の頭の中にあるものを表現するのが苦手だなと感じていた。

幼稚園になって、みんなが自分の名前なんかを書きだして、ムスコも一生懸命書いてはみるのだが、蛇が這っているような字。

一度園児皆が自分で書いた名前を教室の前に張り出されたときがあって、その日は誰とも遊ばずに私の手をグイグイひいて、下を向いて、1秒でも早くみんなのところから離れたい様子だった。

入学の時も相談したが、「1年生でひらがなをみっちりやるから、もう少し様子を見ましょう」と言われた。

でも、ムスコはひらがなの授業が終わっても、まず枠の中に1文字を収めることもできなかった。

同じように、いつまでたっても楽譜が読めず、5線の中に音符を書くことがどうしてもできなかった。

絵も、親としては少しづつ成長していると満足だったが、皆と比べるとやっぱり明らかにひとり幼かった。

新しい病院で読み書きの検査をして、どうも読み書きには問題なく、「目の認知」と「脳からの筋肉への伝達が悪い」障害だとわかった。

発達障害の子は運動神経が今一つな子が多い。

というのは聞いたことあるし、その程度のことかと。

でも、説明を聞いていると、もっとずっと複雑な、私には理解できないもどかしさの中にいたのだと知った。

まず「目の認知」

正直未だによくわからないけれど、要するに、自分が見ている場所と、実際の場所にずれがあるというか、見えていると思っている場所が違うというか、、。

例えばノートには枠があって、本人は、本人が見ている枠の中に字を書こうとしているのに、実際書いた字は、実際の枠からは大きく外れている。

とか、点と点があって、二つの点を通る線を定規で書こうとしているのに、どうしてもずれる。

とか、バスケットのゴールはちゃんと見えているはずなのに、どうしてもそこへ投げられない、とか。

「目の認知」に関してはさほどひどくないから、今はいい練習テキストもあるし、それで練習したらいい。とのことだった。

紹介されたのが


このシリーズのレベル3とレベル4。(障害の程度によって、どれが良いかは多少変わる)

どんどん進まなくてもいいから、コピーして、何度も繰り返しやってみる方が力になるらしい。

ムスコは線を引くのは苦手ではあるが、いろんな形を書くのは楽しいようで、調子のいいときは喜んでやっている。

ただ、学校の宿題だけでも最後までやらせるのに毎日苦労しているので、よっぽど本人の体力と気力に余裕のあるときしかできない。

結局、お休みの日に数枚まとめてしたりしている。

しかも見てないと、適当に線を引いて「できた!!」となるから、それでは意味がない。

毎回毎回、この点とこの点からずれないように線を引くんだよ、と促さなければならない。

問題なのは「脳からの筋肉への伝達」の障害の方だ。

こっちが、生活の本当に様々なところで足を引っ張っていたのだ。

両手が浮いた状態で、片方ずつ違うことをするのが難しい。

頭で思った行動を、瞬時に体で行うことが難しい。

力加減のバランスがとれない。

複数の事を、同時に体現できない。

自分の体のどのあたりに今手があるか、などが感覚的に分からない

などなど、、、

まさか洗濯バサミをつまむことも難しかったなんて、、全く気付いてやれなかった。

点つなぎがうまくできないのも、目の認知のせいもあるが、そもそも、定規を抑える手の力がちゃんと機能していなかったのだ。

これまでの生活の中の事で、思い当たることがたくさんたくさんあった。

我が家は旦那が食事のマナーに厳しく、食事中に肘をついたりこぼしたりはご法度だし、お茶碗やお箸も正しい持ち方でないと厳しく叱られる。

でも、そもそも、彼にはそれが不可能なことだった。

何度言っても、お茶碗を片手で持って、反対でお箸を持ったら、安定しないから肘をついて支える。

何度言っても、お茶碗の持ち方も、落とさないよう独特の持ち方をする。

いっそ犬食い。

叱られて無理してその通りやろうとすると、ご飯をこぼす、お汁をひっくり返す。

それでまたひどく叱られて泣く。

泣いてまた叱られる。

旦那と一緒に食事をする機会はなかなかないのに、その貴重な時間、ムスコにとって嬉しいはずの時間に、一生懸命やってもどうしてもできないのに、コテンパンに叱られてしまうのだ。

そういうことが、食事だけでなく、生活のいろんなところであった。

だからこの障害だと知った時は、なんて残酷だったのだろうと、夜中ムスコの寝顔を見ながら一人で泣いた。

分かってから旦那にも話をし、すぐに全部を受け入れることはできない様子だったけど、見方を変えてくれるようになった。

旦那は部活人間だったし、自分のムスコにも男として厳しいと思う。

運動も何かしてほしかったと思うし、それがこんな形で実現しないなんて思わなかっただろう。

もちろん、障害があったって運動はできるが、旦那が求めているものは多分求められないし、そもそもすでに完全に運動嫌いだ。

上手じゃないから、みんなにいじられるし。

先生はもう一つ衝撃的なことも言われた。

「楽器とかも、難しいよ」

(え、ピアノは?今あんなに一生懸命やっているのに)

『先生、この子ピアノをやってますが、、』

「それはいいですね!小さいころからいいリハビリをしていたことになります。でも、普通の子みたいに上達はしないから、楽しくやれたらいい、くらいにしてあげてください。」

これはショックだった。

あんなに頑張ってるのに。

ピアニストになるんだって(いやそこまで期待しないけど)、やっと少しだけ自信を持ててきたのに。

「得意なことはピアノです」って、堂々と言えるようになっていたのに。

そうか、ピアノとクレッシェンドをどれだけ頑張っても上手くできないのは、そういう事だったのか、、。

これまで、子供達の発達障害に関してそこまで落ち込むことはなかった気がするが、このときはさすがに、しばらく落ち込んでしまった。

この先も、どれだけそういう「壁」にぶつかるんだろう。

現在ムスコはリハビリに通い、そこでリハビリをするというよりは、リハビリの方法を学んでいる。

そこで教わったことを、日常の中にちょっとずつ取り入れてやらなければいけないのだが、点つなぎ同様、なかなか充分にできていないのが現状だ。

でも、目の認知も体の方も、9~10歳がひとつの区切りらしく、それ以降はなかなか上向きにならないのだそう。

だから、今頑張らないと、、、、

でも、頑張る事ばっかりじゃ、しんどいよね、お互い。

少し前に、学校のイベントでお椀を持参する機会があった時、たまたまお友達が持っていたお椀を見て驚いた。

すぐにどこで買ったのか聞いて、ムスコに買ってやった。


(↑ムスコのはこれの一つ小さいタイプ)


こちらはお友達が持っていたもの)

介護用らしいが、これならムスコも持ちやすいに違いない!!

旦那に「行儀悪いからだめ。ちゃんと普通のを使えないと」と言われるかな、とちょっと思ったけれど、

普通のが使えないわけではないし、家でご飯を食べるときくらい、ストレスをちょっとでも減らして楽しく食べてほしい。

ムスコに買ったものを見せると、

「わぁ!!○○ちゃんと同じやつ!やった~!ママ、持ちやすいよ。ありがとう!!」

と、喜んでくれた。

よかった。

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